ずぼっとはまった泥沼ってくるっていたってトレーンのように

最近音楽をあまり聴かなくなって、聴くとしてもジャズかクラシックか欅坂46かZAZENBOYSぐらい。久しぶりにZARDなんか聴くと泣きたくなる。

一応、ネタバレしまくり。
セッション。名門音楽院のフレッチャーという教師が鬼の如く厳しく、それにしごかれるドラマーの一生徒を主人公に置いている。鬼教官と教え子というので『フルメタル・ジャケット』みたいなイメージを抱いていたら、結構そんな感じだった。軍隊かジャズのビッグ・バンドかの違いかってくらいに。
ただ今時はパワハラやらナニハラやらで即訴えられて批難を浴びせられる時代。フレッチャーも、生徒だけでなく他の教師からも恐れられながらも、いずれ訴えられて辞職に追い込まれることからは逃れられなかったわけだけど、この映画の見所はそこから。
しごきあげられて暴発して賢者モードな穏やかな生活を送り出していた主人公が、音楽院を辞めたフレッチャーと飲み屋で遭遇して、「なんかまあいろいろあったけど過去のことだし...あ、そういえば今度ステージ復帰するんだけどいいドラマーがいなくてさ。やってみない?何だかんだでやっぱりお前が一番信用出来るドラマーだし」みたいなニュアンスで誘われ、再びスティックを握ることに。
これがまさかの罠で、本番にいきなり聞かされていなかった曲が始まり、大勢の前で恥をかかされる主人公。フレッチャーが自らの復帰の舞台を台無しにしてまで「チクッたのはお前だろ。俺をなめるなよ」と復讐。圧倒的復讐。主人公は愕然として一度舞台袖に捌けて、心配して見に来ていた父親と抱擁を交わすも、父親を振り切り、戻り、突然、ドラムスを叩き始める。
初めに暴発してしまった時はフレッチャーに殴りかかって罵声を浴びせて強制退場させられてしまったが、今度はドラムスを殴ってフレッチャーが求めていた音を浴びせる。戸惑うフレッチャーも、自らが追い求めていたビート、テンポに、咎めるどころか欲しがり始める。心身の限界を超えているかのようにひたすら叩き続ける主人公に「このクソ野郎!そうだ!それだ!行け!テンポ!それ!飛べ!もっと飛べ!行っけええぇぇぇ!」みたいな表情。知らんけど。
最後は、理想としている到達点が似ている者同士の世界に収まる。

究極の理想、目的が共通している人と出会えることはあまり多くないと思う。同類が集まっても微妙に方向性が違ったり、やっていく内にずれていったり。
ただこのドラマーとフレッチャーは、相性が悪かろうがむかつくことがあろうが、究極に到達するためならそんなもんは屁だと。パワハラだとか胸糞だとかで批判的なレビューがちらほらあったけど、そもそもそういう世界で生きてない。まあ自分なら厳しいのとか嫌いだし怒られたり嫌なことがあったらもう帰って寝たいけど。お菓子食べながらスマホいじったりしたいけど。可愛い犬と戯れたいけど。何もしないで百億円欲しい。何もしないで百億円欲しい!

おわり