90年代のあの吐き気のする雰囲気

どういう映画なんこれ。

と思いながら観てたけど、観終わったらきっと各々の解釈が付くんだろう。90年代特有の狂気を纏ったホラー風コメディって感じで観てたけど、終盤の主人公が錯乱する辺りから、これは現代人が陥りがちな情緒不安定を誇張したやつやと思った。チョゲチョゲパッション。

エリート会社員を気取って自分磨きを欠かさずにいる自分に酔い、イイ店で食事をするための予約に懸命になり、名刺の質に拘る。一見アホらしく思えるそれらだが、他に満たされることがないから仕方ない。そもそも満たされることがない。昔オウム信者が言った「お腹の空かない飢餓感」がこの頃から今もずっと変わらずに澱んでいる。団塊くらいの年寄りとのジェネレーションギャップはこれによるところが大きいと思う。ただ今は貧困問題もクローズアップされてきてるから、戦後に戻ってきてるんじゃないかって感じもあるよね。

自分がどうしたら満たされるのかもわからないから人を殺す。嫉妬や欲望の赴くままにセックスをして人を殺してそれを食べる。それで納得がいくわけもなく、罪の意識に苛まれ、これまでの犯罪を暴露しようとするも、まともに相手をされない。殺したことも曖昧模糊としてくる。妄想なのかリアルなのか。結局誰も自分という存在を認識していない。他人にまるで興味を示さない世界に自分はいるのだと思い込むのも仕方ないが、周りには君を思ってくれてる人もいるんやで。秘書の子とか。

映画でやってることはめちゃくちゃやけど、案外自分とかけ離れた世界とは思えない。いつ自分が錯乱してもおかしくないって多くの人が思ってるからこの映画が有名で今も観られ続けてるんやろうね。おーこわ。